✅先生の悩み
・不登校の子、教室に入れない子への対応、どうすれば? ・教室に1人でいる子を友だちと繋げたいけど、どうすれば?
今回は、こういった先生方の疑問に答えます。
✅本記事の内容
不登校の子への対応の方法をまとめました 1、教室に1人でいる子への対応 2、教室に入れない子への対応 3、学校に来れない子への対応
✅著者の経験
この記事を書いている私は、11年学級担任をしてきて、 不登校0人、前年度不登校、不登校傾向だった子の復帰率100%でした。
こんな僕が解説していきます。お困りの先生方の少しでもお役に立てれば幸いです。
これから、具体的な対応方法について説明をしていきますが、前提は、学級経営における「考え方」。ここが重要です。
人の行動は全て「考え方に基づいて行われる」からです。いかに優れた方法であっても、根本の考え方がズレていると、その実践は
決してうまくいくことはありません。また、一時的にうまくいっても、長い目で見た時には必ずほころびが生じます。
「学級経営における大切な考え方って何?」と感じられた方は、先にこちらの記事をお読みください。
土台を整えた上で、ぜひ以下の方法をお試しください。
不登校の子への対応の方法をまとめました
教室に1人でいる子への対応
不登校とまではいかなくとも、クラスに1人は、「いつも1人で過ごしていて気になる子」がいるのではないでしょうか。その子への対応としては、まずはあなた自身が、その子と繋がることです。
先生がその子と繋がっていないと、他の友だちと繋げることはできないからです。
以前私が担任したクラスにも、1人でいることが多いあおいくん(仮名)という子がいました。あおいくんは教室で1人でいることが多い子でした。話しかけても、返答がなく、なかなか関係を築けずにいました。
その状態で、休み時間に外へ連れ出して他の子と一緒に遊ぶ中で、なんとか関係を築かせようとしました。でも、数日後、あおいくんは外へ出ることも拒むようになりました。
この時の私は、自分自身があおいくんと繋がることをせず、まさに「あおい君を変えよう」としていたわけです。
悩んだ私は、まず「自分ができることは何だろう」と考えました。それは、「まずは自分があおいくんと繋がることだ」ということでした。それから、あおいくんの興味のあるものを見つけ、その話題で積極的に話しかけるようにしました。すると、少しずつ会話が増えました。続けているうちに、その話題に興味がある他の子も会話に混ざってくるようになり、自然とその子が教室で一人で過ごすことはなくなっていきました。
あおいくんのような子ほど、関係を創るのが難しいんじゃないか。そんなことできたら苦労しない、と感じられた方もいるかもしれません。でも、大切なのは「あおいくんを変えようとする」のではなく、「自分にできることは何か考える」そして、「行動すること」なのです。
あなたのクラスに1人でいて気になる子がいる場合は、「その子を誰かと繋げよう」=「他人を変えよう」とするのではなく、まずは「あなたが繋がる」=「自分ができることをする」ことが大切なのです。
教室に入れない子への対応
教室に入れない子への対応で大切なことは、「教室に入らない目的を考えること」です。そう、「教室に入れない原因」ではなく、「目的」を考えるのです。これは、アドラー心理学の「目的論」に基づいた考え方です。詳しくは、本書をご参照ください。
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目的論について簡単に説明します。人の行動には必ず有意識、無意識を問わず「目的」があるという考え方です。何が原因なのだろう、と考える「原因論」とは対の考え方とされています。
例えば、教室に入れない子について考えてみましょう。この子を、「どうして教室に入れないのだろう」という「原因論」でみてみます。すると出てくる答えは「教室で友だちに嫌なことをされたから」といったものでしょう。ここで浮かぶ考えは、過去の出来事であることが多いです。このように原因論で考えると、先生ができることは限られてしまいます。過去を変えることはできないからです。
では、「目的論」で考えてみます。「この子が教室に入らない目的は何だろう」。そう考えると、その子の現状に応じて考えることで、「教室に入らないことで、保健室の先生と2人でゆっくり話せるから」などという考えが浮かんできます。すると、私たち教師がその子にすべきアプローチは、「教室に無理矢理連れて行く」ことではなく、「ゆっくり落ち着いた場所でたくさん話を聞いてあげること」となります。そうして、たくさん話を聞いてほしいという目的が十分満たされれば、自然と教室へ入っていけるようになります。
そんなことで、本当に教室に入れるようになるの?そう感じる方も多いでしょう。私が初任で勤めていた学校にも、朝はお母さんに無理矢理連れてこられ、職員玄関で泣き叫び、何とか職員室まで引きずって連れて行くかなければならないあきらくん(仮名)がいました。当時の担任の先生は、何度もあきらくんを教室へ連れて行こうと努力されていましたが、頑なに拒み、改善されることはありませんでした。そこで、当時の教頭は、「あきらくんは父親との関係がうまくいっていない。だからまずは、俺が父親のようにあきらくんに接する。」と言って、毎日職員室で父親代わりとなって様々な関わりを始めました。つまり、あきらくんの「父親との関わりをもっと増やしたい」という「目的」を自ら満たそうと試みたのです。すると、あきらくんは少しずつ、朝、職員室までは泣かずに自分の力でくるようになりました。そして、2ヶ月が経過しようとしたころ、何事もなかったかのように教室でまた日常を送り始めたのです。
教室に入れない子の目的に着目することで、これまでには見えなかった突破口が見えることが多々あります。
学校に来れない子への対応
学校に来れない子への対応も、上記と基本的には同じです。「どうして学校に来れないのだろう」(原因論)ではなく、「学校に来ない目的は何だろう」(目的論)で考えてみるのです。
そうすることで、意外な突破口が見つかることが往々にしてあるからです。
ただ、不登校の子の場合、先生自身が、その子の情報をあまり持っていないことが多いでしょう。私が以前担任した6年生のクラスにも、前年度不登校だったみつきさん(仮名)がいました。私はみつきさんのことを全く知らず、直接会ったこともありませんでした。そこで、まず試みたことはみつきさんが「学校に来ない目的」を知ることでした。直接会える状況なら、本人との会話を通じて知ることができますが、みつきさんとは当初全く会えませんでした。そこで、みつきさんのお母さんに、みつきさんの好きなものや、幼少期のことをとにかくたくさん聞きました。すると、みつきさんはゲームがとても好きなこと、以前宿題を忘れたことを毎日のように先生に叱られ、次第に学校にいかなくなったということを知りました。そこで私はみつきさんの目的は「学校に行かず好きなゲームをしていたい=自分が楽しいことを優先したい」、「叱られて、みんなの前で恥をかきたくない、純粋に怒られたくない」という目的を持っていることに辿り着きました。そこで、まず一緒にゲームをすることを提案してみました。すると、何回か断られながらも会うことに成功。ゲームをしながら関係を深める中で、「宿題を忘れても叱ることはしないよ。」「忘れたら、学校で一緒にしようよ。」という言葉をかけていくうちに、週に1回、2回、と少しずつ登校する事が増え、2学期にはほとんど毎日学校に来れるようになりました。
確かに、不登校は長期戦になることが多いですし、担任をしている1年間では結果が出ないこともあるでしょう。しかし、「目的論」で子どもに向き合い、自分自身にできることは何か、と考えることで、突破口が見出せることが少なくないはずです。
とにかく行動に移しましょう
せっかく、本記事を読んでくださった熱心な先生に、私は心から「目の前の子たちと楽しい毎日を送ってほしい」と願っています。しかし、あなたの現状を変えるには、あなたが行動するしかありません。私がいくら頑張って情報を届けても、願っても、あなたの状況を変えることができません。では、あなたの現状をより豊かにする事ができるのは誰か。そう。世界に一人だけ。あなただけなのです。まずは明日から何かできることをやりましょう。今回の記事の、「目的論」で子どもと向き合うことは、なんの準備の手間もいりません。ただ有意識で、「この子の目的は何だろう?」と考える。そして、アプローチをし続け、その子が一歩踏み出すのを見守る。
教育は長期戦です。うまく行かず疲れちゃうことも多々あるでしょう。そんな時は、またここに戻ってきてください。コメントくだされば、相談に乗ることもできます。頑張る先生の心の拠り所。となりの学級経営で、またお待ちしております。
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